入賞者インタビュー:大阪公立大学 東さん
進化計算コンペティション 2023 〜自動化が進んだ製造工場における機械加工スケジューリング問題への挑戦〜
公開日:
OptHub 編集部

コンペ概要:自動化が進んだ製造工場における機械加工スケジューリング問題とは?
進化計算コンペティションは、産業界の実課題をテーマに、最適化手法の実力を競い合う大会です。2023 年の課題のひとつは「自動化が進んだ製造工場における機械加工スケジューリング問題」。多種多様なジョブと機械の制約条件のもとで、効率的な加工スケジュールを生成するという、実務に直結した高度な最適化問題でした。
チーム結成の背景
この課題に挑んだのは、大阪公立大学 工学部の学生によるチーム「Azuma86」。参加者は学部 3 年生として研究室に所属したタイミングで参加を決意。チームは研究室の同期とともに結成され、進化計算の初心者ながらも、実課題に真摯に取り組む構えでコンペに臨みました。
最初のアプローチ
コンテスト開始当初は、最適化に関する知見が十分でなく、問題文を読んでも何から着手すればよいか分からない状態でした。まずは 1 週間程度、問題の理解に集中し、シミュレーションの構造や制約条件の把握に努めました。
アルゴリズムの選定では、完全な新規開発は難しいと判断し、多目的最適化手法である MOEA/D を活用。進化計算ライブラリ「PlatEMO」に実装されたアルゴリズムを用い、解表現や制約の扱いを工夫することで、問題への適用を実現しました。
取り組みと工夫
チームは役割分担を明確にし、東さんがアルゴリズムの理解と解表現の工夫を担当、もう 1 名のメンバーが問題分析を担当する体制で進めました。特に注力したのはシミュレータの理解で、関連論文を読み込み、ブラックボックスとなっていたシミュレータの挙動を解析。
さらに、自作のシミュレータを用いてアルゴリズム調整を重ねたことで、最終的なスコアに大きく貢献。この点が評価され、「産業応用特別賞」を受賞するに至りました。
得られた知見と気づき
当初は進化計算や実問題に対する知識が十分ではなく、コンペ参加時点では初学者としての取り組みでした。
その後、研究を進める中で、実問題がどのような構造を持ち、どのような場面で最適化手法が活用されるかを実感するようになりました。実課題はベンチマーク問題よりも構造がシンプルな場合もあり、アルゴリズムの応用可能性を広げるきっかけにもなったそうです。
ベンチマーク問題だけでなく、実問題での検証機会を持つことが、研究の質やモチベーションの向上につながることを改めて認識したといいます。
最適化に対する思い
進化計算や最適化アルゴリズムは、まだ一般的な認知が高いとは言えません。最適化と聞いても具体的なイメージが湧かないという声も多く、実際に理解が難しいと感じられる場面があるそうです。
今後は生成 AI に負けないくらい、最適化の重要性や面白さが知られ、技術としての注目が高まることを願っているとのことです。
ポスター発表と成果
ポスター発表では、シミュレータを用いた取り組みについて多くのフィードバックを得ることができました。特に、ブラックボックスの理解に注力した点や、アルゴリズムとシミュレーションの接続に関する工夫が高く評価されたとのことです。
また、コンペでの受賞を通じて、研究室のホームページで取り組みが紹介されるなど、周囲からの関心も高まりました。
未来の参加者へ
参加者からは、進化計算コンペに参加することで、自分の研究テーマが社会とどうつながるのかを実感できる機会になると語ってくれました。最適化の視点から世の中を見てみると、さまざまな場面に課題や改善の余地があることに気づくきっかけになるはずです。
また、「できるだけ早く参加するのがおすすめ」との声がありました。早期に取り組むことで、考える余裕が生まれ、結果的に順位向上にもつながるとのことです。
編集後記
進化計算の初心者ながら、真摯に問題に向き合い、実課題の解析に挑戦した大阪公立大学のチーム「Azuma86」。研究と実務のギャップを埋める一歩として、意義ある取り組みでした。アルゴリズムやツールの理解にとどまらず、シミュレータという「相手」の本質を捉えようとする姿勢が印象的でした。今後のさらなる成長と実社会での活躍を楽しみにしています。