入賞者インタビュー:日本福祉大学 串田先生
進化計算コンペティション 2020 〜ゲームを楽しくする乱数の設計問題への挑戦〜
公開日:
OptHub 編集部

コンペ概要:ゲームを楽しくする乱数の設計問題とは?
進化計算コンペティションは、産業界の実課題をテーマに、進化的アルゴリズムの応用可能性を問う大会です。2020 年の課題は「ゲームを楽しくする乱数の設計問題」。プレイヤーの体験や認知バイアスを考慮した、意図的にバイアスを加える乱数設計という斬新なテーマが話題を呼びました。
参加の動機と背景
この課題に挑戦したのは、日本福祉大学の串田教授。進化計算、特に差分進化や制約付き最適化を専門とし、近年は実問題に多く取り組まれています。
今回のような実問題は、研究成果として論文化しやすい点もあり、進化計算の応用先を広げる一環として、継続的に進化計算コンペティションに参加しているとのことです。
課題の所感と取り組みの工夫
乱数は進化計算にとってなじみ深いものでありながら、「人間が面白いと感じるような乱数を設計する」という観点は新鮮で面白かったと語ります。
ただし、解の設計にあたってアルゴリズム的な工夫の余地が少なく、2 点スワップ程度の操作が基本となる難しさを感じたとのこと。問題の特性や制約条件を把握するために、まずは実際に解を送信して挙動を確認。制約の扱いや評価傾向が読み取れたことで、問題の構造に対する理解が進んだそうです。
アルゴリズムは、シンプルに ε 制約法+ローカルサーチを採用。パラメータは非公開でしたが、公開されていたシミュレータ上で高評価となる解は、本番評価でも比較的高いスコアを得ることができるとわかり、これを初期解として活用しました。
さらにやりたかったことと研究視点
本番では、ε 制約+ローカルサーチというシンプルな手法にとどまりましたが、余裕があればこの問題に特化した交叉や突然変異を開発し、より進化計算らしいアプローチを試してみたかったとのこと。
学術と産業の視点から見た最適化
産業界と学術界での難しさの違いについても言及がありました。ベンチマーク問題の難しさは定義に依存する一方で、産業界の問題は現場との折衝により、評価回数や制約の柔軟性が調整可能です。
1 ヶ月のコンペでは難しいことも、産業界の現場では場合によっては長期間をかけて最適化に取り組む余地があり、問題設定そのものをどう設計するかが重要な論点になるとのことです。
最適化に対する思い
進化計算は、機械学習が不得意な領域に対しても柔軟にアプローチできる可能性を持つと語ります。今後は、流行の LLM(大規模言語モデル)と進化計算を組み合わせ、相互補完的に性能を向上させるような研究が進むことを期待しているそうです。
「まだまだ世間には知られていないが、進化計算の力はもっと広く活用されるべき」と話してくれました。
ポスター発表を通じた交流
ポスター発表では、評価回数の割り振り方の工夫や、シミュレータの使い方など、他の参加者の工夫に刺激を受けたとのこと。特に、1 位の参加者のように少しでも解を良くするための粘り強い調整や、既存の乱数生成器を活用した斬新なアプローチが印象的だったそうです。
時間をかけて問題の特性を掴み、丁寧に取り組んだ参加者たちの姿勢に学びが多かったと語ってくれました。
未来の参加者へ
「リアルタイムに順位が見えるのがスリルがあって楽しい」と語る串田教授。順位の変動がモチベーションにつながり、特にスコアが抜かれたり順位が変わったりすることが刺激になったといいます。
また、これから参加する方に向けて、「過去の参加記を見ることで、センスの良い取り組み方が学べる」とアドバイス。特に初学者には、参加記を参考にしながら、気軽にチャレンジしてほしいとのことです。
編集後記
進化計算の実問題応用に精力的に取り組む串田教授。本質を捉え、シンプルながら的確なアプローチで成果を出す姿勢が印象的でした。問題との相性を見極め、着実に結果を出すその取り組みは、まさに実問題に挑む進化計算研究者の姿勢を体現しているように思います。今後も多くの実課題に挑戦し、進化計算の可能性を広げていくことが期待されます。