入賞者インタビュー:東京都市大学 堤さん・岡村さん
進化計算コンペティション 2023 〜自動化が進んだ製造工場における機械加工スケジューリング問題への挑戦〜
公開日:
OptHub 編集部

コンペ概要:自動化が進んだ製造工場における機械加工スケジューリング問題とは?
進化計算コンペティションは、産業界の実課題をテーマに、最適化手法の実力を競い合う大会です。2023 年の課題のひとつは「自動化が進んだ製造工場における機械加工スケジューリング問題」。多種多様なジョブと機械の制約条件のもとで、効率的な加工スケジュールを生成するという、実務に直結した高度な最適化問題でした。
チーム結成の背景
本課題に挑んだのは、東京都市大学 大谷研究室の学生によるチーム「penguin」。中心メンバーの堤さんは自然言語処理を専門としながらも、過去 3 年にわたり本コンペに継続して参加。研究室内でコンペ形式の課題が出されたことをきっかけに、岡村さんの取り組み姿勢に感心して声をかけ、チームとして外部コンペに挑戦する形となりました。
最初のアプローチ
課題文を読んだ第一印象は、「制約条件の多さ」。あまりの情報量に、まずは課題文を印刷して紙に並べ、全体像を物理的に把握しながら読み解く作業からスタートしました。製造現場のイメージが掴みきれなかったため、YouTube で実際の工場の様子を確認し、現場感覚を持って問題に向き合うよう努めました。
解法の工夫とチームでの役割分担
アルゴリズムの設計では、岡村さんがまず実行可能解を安定して出す基盤を構築。ワークごとの「取り付け・取り外し順序」を解表現として採用し、その順序に基づいて制約を満たすスケジュールを構築しました。機械と作業者の並列処理、ワークの着手可能時刻を踏まえたスケジューリングにより、現実的な解を安定的に生成しました。
この基盤を活かし、堤さんが焼きなまし法を用いたウォームアップ戦略を設計。ローカル評価器と貪欲戦略を組み合わせて、初期解を効率的に探索し、評価サーバ上では得られたスコアやスケジュール情報を活用したローカルサーチによって、評価値の改善を地道に積み重ねていきました。
ポスター発表と交流の価値
本戦では上位入賞を果たしましたが、ポスター発表を通じて得られた他チームからの学びも非常に大きかったと話します。例えば、「MIP ソルバーが制限時間内で解を出せるようなスケジュールを意図的に設計する」という発想は、自分たちのアプローチにはなかった視点でした。その工夫があれば、もしかしたらさらに上位も狙えたのではと、悔しさも残ったようです。
また、時間内に MIP ソルバーが解けるかどうかをあらかじめシミュレーションで検証していたチームにも感心したとのこと。過去 3 年は質疑のないスライド中心のオンライン口頭発表のみでしたが、今回初めてオフラインでポスター発表に臨んだことで議論が深まり、他の参加者とも交流でき、有意義な時間だったと振り返ってくれました。
最適化の魅力と広がりへの想い
今回のコンペを通じて、最適化技術の有効性をあらためて実感できたと語ります。専門分野ではないスケジューリングというテーマに取り組んだことで、単なる理論ではなく、具体的な手法として最適化を「使う側」の視点で捉えることができたのが大きな収穫だったといいます。
実際に手法を作ってみると、人に説明しやすくなり、周囲の理解も得やすくなったとのこと。また、産業界の問題を解くには、現場を具体的にイメージすることが非常に重要だと感じたそうです。YouTube を通じて製造現場の雰囲気を掴み、それをもとに手法を設計したことで、より現実に即した最適化に近づけたといいます。
最適化の社会的な可能性についても強い関心を持っており、「もっと多くの分野に最適化が広がってほしい」と語ってくれました。特に運送業や製造業に限らず、実際の課題がオープンになることで、多くの人がその問題に触れ、似た構造を持つ問題が社会のあちこちで解かれ始める。それによって、適用分野は自然と広がっていくはずだと考えています。
研究室内で行った一般向けの最適化紹介イベントでは、「小選挙区の一票の格差に使えるのでは?」という意見を受け、それが実際に研究として形になったという経験も。最適化という技術が、多くの人とつながることで、多くの分野と融合して実応用が進む——そんな未来を信じていると話してくれました。
未来の参加者へ
順位がどうであっても、ポスター発表にはぜひ参加してみてほしいです。発表を通して、他のチームと自分たちの手法を比べることで、新たな気づきや改善のヒントが得られます。実際に、自分たちの方法が他の人の手法とうまく組み合わさることで、もっと良い結果が出せるかもしれないと感じました。
それに、手法に「絶対的な正解」はありません。どんな手法にも独自の良さがあり、自分たちのやり方にもきっと意味があります。コンペを通じて、知識や技術の交換ができるのはもちろん、最適化の活用方法や、社会への応用にまで話が広がるのが面白いところです。
編集後記
チーム「penguin」は、普段扱わないテーマに取り組みながらも、課題に真剣に向き合い、着実に手法を組み立てていきました。手元での安定した解生成、簡易評価器を活用したローカルサーチ、現場の感覚に近づくための工夫など、限られた条件の中で地に足のついたアプローチが印象的でした。
コンペを通して得た学びや発見が、今後の研究や実社会での応用につながっていくことを期待しています。