入賞者インタビュー:三菱電機 佐鳥さん・芳川さん

進化計算コンペティション 2023 〜自動化が進んだ製造工場における機械加工スケジューリング問題への挑戦〜

公開日:

OptHub 編集部

対象コンペ: 進化計算コンペティション 2023
受賞: 単目的部門・多目的部門 1 位
所属: 三菱電機

入賞者インタビュー:三菱電機 佐鳥さん・芳川さん

コンペ概要:自動化が進んだ製造工場における機械加工スケジューリング問題とは?

進化計算コンペティションは、産業界の実課題をテーマに、最適化手法の実力を競い合う大会です。2023 年の課題のひとつは「自動化が進んだ製造工場における機械加工スケジューリング問題」。多種多様なジョブと機械の制約条件のもとで、効率的な加工スケジュールを生成するという、実務に直結した高度な最適化問題でした。

チーム結成の背景

本コンペに挑んだのは、AI 最適化グループに所属する社会人チーム。手法の開発を主に担当した佐鳥さんと、メンタリングを行った芳川さんの 2 名で構成されています。

佐鳥さんは普段から最適化案件に携わっており、進化計算の実務経験もあるエンジニアです。大学時代は強化学習を専攻しており、最適化と関連のある分野に取り組んでいたというバックグラウンドを持っています。

最初のアプローチと課題への印象

問題を読んでまず感じたのは、「評価サーバの資源が有限である」点の難しさと、それに伴う戦略性の必要性でした。限られたリソースの中で、どれだけ効率よく有望解を提出できるか——そのバランス感覚が、実問題と非常に似ていると感じたといいます。

解法の工夫と取り組み

取り組みでは、2 つのコンセプトを軸に開発が進められました。

  • コンセプト 1:簡易シミュレータを自作し、初期段階の探索をローカルで実施。有望と判断された解だけを評価サーバに提出することで、計算資源の消耗を抑制しました。
  • コンセプト 2:大規模なジョブショップスケジューリング問題(JSP)を複数の小規模な問題に分割し、それぞれを MIP ソルバーで解くという手法。既に解いた部分は次の問題に制約として取り入れることで、段階的に全体のスケジュールを構築しました。

実装の過程では課題も多く、特に「分割方法によって局所最適に陥る」点が大きな壁となりました。これに対しては、分割自体を遺伝的アルゴリズム(GA)で最適化することで解決。さらに、評価サーバでの処理時間を考慮し、スケジュールにバッファを設ける工夫も行いました。

振り返りと今後への示唆

結果的にチームは 単目的部門、多目的部門共に 1 位という成果を収め、社内でも表彰されるなど高い評価を受けました。一方で、GA 設計や問題分割の工夫については、もう少し工夫できたのではという振り返りもあり、いくつか追加で試してみたかったアイデアもあったとのことです。

また、他チームの解法からも多くの学びがあり、ポスター発表では良い刺激を受けたとのこと。自身がトップだったとはいえ、他のアプローチには新たな視点が多く、今後の案件にも活かせそうな示唆が得られたと語ります。

最適化と現場のリアリティ

今回の問題は、業務で最適化に取り組む立場としても「実問題に近い」と感じたそうです。特に評価サーバのような制限付き環境下での戦略的最適化は、実務においても頻繁に求められる能力であり、学生にもそのリアルさを感じてもらえる課題設計だったと評価しています。

さらに、今後は生成 AI との融合によって、定式化の支援などが自動化されることで、最適化技術がより身近な存在になっていくのではないか——そんな展望も語ってくれました。

未来の参加者へ

このコンペは、研究だけでは得られない実践的なスキルを養う場でもありました。解法の構築力、実装力、そして制約下での判断力など、実問題に対応する総合力が求められる点が魅力です。ポスター発表も、他チームとの交流や新しい視点を得る良い機会になるため、ぜひ参加してみてほしいと思います。

編集後記

社会人エンジニアが挑んだ今回の取り組みには、実務での知見と最適化技術への強い関心が随所に見られました。課題設定と向き合いながら、自作シミュレータや分割解法、評価サーバを意識したスケジューリングなど、現実的な制約の中で多角的な工夫を重ねた姿勢が印象的でした。

最適化の進化と普及を支える実践者として、今後のさらなる活躍を期待しています。

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