入賞者インタビュー:電気通信大学OB 高木さん
進化計算コンペティション 2020 〜ゲームを楽しくする乱数の設計問題への挑戦〜
公開日:
OptHub 編集部

コンペ概要:ゲームを楽しくする乱数の設計問題とは?
進化計算コンペティションは、産業界の実課題をテーマに、進化的アルゴリズムの応用可能性を問う大会です。2020 年の課題は「ゲームを楽しくする乱数の設計問題」。プレイヤーの体験や認知バイアスを考慮した、意図的にバイアスを加える乱数設計という斬新なテーマが話題を呼びました。
背景と専門分野
この課題に挑戦したのは、電気通信大学OBの高木さん。佐藤研究室にて学士・修士・博士課程を通して進化計算を研究し、特に多目的最適化における連続値最適化を専門としてきました。2023 年までは最適化ソフトウェアの開発にも従事しており、理論・実装の両面から最適化技術に精通しています。
所感と最初の取り組み
数式構造を観察した結果、探索空間は大域的単峰であり、大域最適解に到達可能な構造であると推測。小規模な問題では実際に最適解に近づくことができたため、まずは紙の上で手作業による検証を行い、どのような条件で良い系列が得られるかを丁寧に確かめるところから始めました。
そのうえで今回の問題を見たときに感じたのは、システム面での大きな変化です。2020 年の回からは、評価サーバ内に秘匿されたパラメータの影響により、ローカル評価と本番評価の挙動が一致しなくなっており、さらに問題数も多く、従来と比べて構成が大きく変わった印象を受けたといいます。
解法とアルゴリズムの工夫
本コンペでは、条件付きランダムウォークを中心としたシンプルなアルゴリズムを採用。大域的単峰であることを活かし、評価値が悪化しそうな解や、制約違反と判定できる解はローカルで除外したうえで、サーバへの提出を行う設計としました。
シンプルな手法を選んだ理由は、「ライブラリを導入するだけではうまくいかない」と判断したため。探索空間はそれほど複雑ではなく、自分で探索の流れをイメージできる範囲で設計した方が効果的だと考えたといいます。
また、多目的最適化については、送信した解とその評価を観察する中で「明確なトレードオフ関係が見られない」と判断。50 次元の問題も含め、片方の指標が良くなっても、もう一方が悪化するようなケースは確認されず、単目的最適化で得られた解を起点に、探索を行うという戦略を採りました。
学術と産業の間で見えたもの
最適化の現場に携わってきた立場から、高木さんは学術と産業の間にある明確な違いを指摘します。学術的な手法は多様なベンチマークに適用できる汎用性が重視されるのに対し、産業の現場では目の前の課題に対してどれだけ特化できるかが重要になるといいます。
そのためには、単にアルゴリズムを適用するのではなく、問題をよく観察し、背景知識を取り込む設計が不可欠だと感じたとのことです。
最適化への視点と広がりへの期待
高木さんは、「進化計算だけでは解決できない社会課題も多い」と話します。それゆえに、進化計算に加えて、数理最適化・ベイズ最適化・機械学習、さらには高速化技術も含めて、幅広く最適化を捉えていく必要があると考えています。
異なる手法を組み合わせることで、最適化の価値はさらに広がっていく。そうした姿勢で、これからも最適化に取り組んでいきたいと語ってくれました。
結果発表と得られたフィードバック
結果としては、圧倒的なスコアでの高評価を得ることができ、プレゼンの内容についても良い評価を受けたとのこと。参加者としての取り組みに対して、手応えのある結果となりました。
また、埼玉大学の原田先生が取り組んでいた内部パラメータの推定に関しては、KLab 社の関係者から「応用したい」といった声が寄せられ、高く評価されていたそうです。高木さん自身も、スコアとは別の観点からの評価,考え方に強く感心したと話してくれました。
産業応用特別賞の手法からも多くの学びがあり、結果発表は単なる順位発表以上に、さまざまな視点での評価と交流の場になっていたと振り返ります。
未来の参加者へ
「コンペの期間は長いので、自分のペースで無理なく進めてください」高木さんは、そう語ります。
賞や発表の機会があることもモチベーションになりますし、大学の広報にも取り上げてもらえるなど、取り組みの価値を実感できる場面も多いといいます。
興味があるなら、ぜひ気軽に挑戦してみてほしい——そんなメッセージを残してくれました。
編集後記
システムの変化や制約の中で、自分の頭で考え抜いたアルゴリズムを丁寧に構築していく姿勢が印象的だった高木さん。手法の選定にも明確な理由があり、探索空間や評価構造を自分の目で見て確かめながら進める姿は、まさに実問題と向き合う実践者の姿勢そのものでした。
今後も、進化計算を含む多様な最適化手法を組み合わせながら、社会の課題解決に貢献していく姿に期待が高まります。